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日本一のローカル線 廃線20年後のいま

北海道幌加内(ほろかない)町は、旭川のさらに北西、天塩山地に寄り沿うように位置する人口わずか約1500人(800世帯)の過疎の町です。
 
実は、この町には日本一が3つもあります。日本最大の作付面積を誇るそば、日本最大のダム湖朱鞠内湖、そして昭和53年に記録した日本最寒記録-41.2度。そして、過去にはもうひとつ日本一がありました。それが、深名線(しんめいせん)です。
 
幌加内町を南北に貫くように走っていた深名線の廃線から20年。線路や踏切、施設もほとんどが撤去され、道床は草木で覆われ、いまではその面影もほとんど感じることができません。しかし、最近になって、この深名線の駅舎を活用した新しい取組みが始まっています。20年の時を経て、いままたローカル線に想いを寄せる人々の動きを探ります。
 
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100円稼ぐのに2800円かかる日本一のローカル線

深名線は、深川と名寄を結ぶ全長121キロのローカル線でした。平成7年(1995年)、開業から71年の歴史に幕を下ろしましたが、その20年も前から超がつく赤字ローカル線でした。1日の利用者は80人程度。平成の世に入るまで、廃線後の代替バスが通る国道が未整備であるという理由で存続し続け、人里もまばらな奥地を1日に数本の列車が空気を運ぶように行ったり来たりしていたのでした。
 
それでも、廃線が伝えられると、全国から鉄道ファンが押し寄せて、にわかに注目されるようになります。毎年秋に開催される「新そば祭り」は、いまでは全国から4万人もの人を集める町の一大イベントに成長しましたが、これも、20年前、深名線の廃線前に全国からひとが押し寄せてきた経験が町のひとに勇気を与えたといいます。
 
いまも、幌加内町のバスターミナルの2階には、赤字ローカル線の遺品としては誠に立派な資料館があります。日本一の赤字ローカル線の物語にひかれて、全国から訪問者が絶えないとか。きっと、雄大な北海道の大地をただひたすらに走っていた姿に、どこかロマンを感じさせるものがあるのかもしれません。
 
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深名線の駅舎にいま再び人が集いだす

さて、すっかり記憶の彼方にある深名線ですが、廃線から20年、新たなまちの拠点として甦えらせようとする取組みがはじまっています。
 
ひとつは、その名もずばり民宿『天塩弥生駅』。廃線後、更地だった深名線の旧天塩弥生駅の場所に東京の元鉄道マンのご夫婦が移住、道内の建築物を移築しながら駅舎そっくりの建物を再建して今年の3月にオープンさせました。宿泊と食堂スペースを備えた駅舎型の施設では、音楽ライブなど若い世代の交流もはじまっています。
 
もうひとつは、深名線の「旧沼牛駅」。かろじて民間所有として残っていた駅舎でしたが、希少な鉄道遺産の木造駅舎を知ってもらい、後世に残したいとの想いから「おかえり沼牛駅実行委員会」を結成、クラウドファンディングを活用して修繕費用を全国から募り、この11月にもお披露目会が開かれる予定です。
 
どちらも忘れ去られていた駅という存在が、町の再生や希望、ひとの交流の場として復活し、新たな歴史を刻もうとしています。
 
◆民宿『天塩弥生駅』Facebook(北海道)
https://www.facebook.com/teya841/
 
◆沼牛駅木造駅舎保存プロジェクト(北海道)
https://readyfor.jp/projects/kamitoshibetsu-numaushi
 
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駅へGO!GO!町のにぎわいを取り戻す

鉄道がまだ重要な輸送手段だったころ、地方の駅は人や荷物が活発に行き交う町のシンボルでした。自然と人が集い、さまざな人生の往来がそこにありました。駅の周辺には商店街が形成され、まちの活気をつくりだしていました。
 
一方で、人口減少や高齢化社会が進むことで、地方のローカル線は、維持困難な路線がさらに増えていくことでしょう。廃線と同時に役目を終える駅もまた、地図からひとつひとつ消えゆく運命にあります。現役の駅も無人化や乗降人数の減少で、駅の役割自体が後退しつつあります。こうしたなかで、町に自然とひとが集まるような場所はどう維持していけばよいでしょうか。
 
駅いう空間や立地に着目した駅の新たな活かし方としてヒントになる事例があります。そのひとつ、JR西日本紀勢本線のアート×駅のコラボ『紀の国トレイナート』は、12の駅をキャンパスに見立てて作品を制作、アートと駅が融合した新しい試みとして今年で3年目に入りました。また、JR東日本仙石線女川駅の温泉×駅の『女川温泉ゆぽっぽ』は、津波被害で新駅を高台に移設、観光とまちづくりの拠点として温泉複合施設を兼ねた駅が昨年(2015年)オープンしました。
 
駅は、無くなってみてその存在の大切がわかるといいます。駅にはもっとさまざまな活かし方がありそうです。人々の想い出や記憶、にぎわいや再生のシンボルして、これからも生き残っていってもらいたいものです。
 
◆紀の国トレイナート(和歌山県)
http://trainart.jp/about/
 
◆女川温泉ゆぽっぽ(宮城県)
http://onagawa-yupoppo.com/

 

(宮城崇志)