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「起爆剤」はもういらない!? 持続可能な地域づくりの秘訣

「起爆剤」。新しい道路、新しい施設、新しいイベント、地域で何かの新しい取組みが始まろうとするとき、ニュースでその言葉をよく耳にします。何かをきっかけに地域の活性化につなげたい、きっと、その想いがぎゅっと詰まった言葉なのだと思います。

 

しかし、そもそも地域づくりに「起爆剤」は本当に必要なのでしょうか。地方創生が国の重要な政策課題になっている昨今、一方でまだまだ元気な地域の事例がたくさん出てきています。それは、地域の人たちが、地元を見つめ直し、そこにあるものを活かして、じっくりと腰を据えて取組んできたものばかり。いまや、リゾート開発や博覧会、アミューズメントパークは、過去の遺産どころか負債になってしまいました。

 

もしかしたら、一過性の「起爆型」ではなく、「線香花火型」のように、息を長くジリジリと魅力を膨らませていく、これこそが、21世紀の持続可能な地域づくりの秘訣なのかもしれません。

 

さて、その「線香花火型」の事例が和歌山県田辺市の「秋津野ガルテン」です。再エネ地域人材を育成する「まちエネ大学」の講座で紹介する地域づくり事例として、現地に取材に行ってきました。

 

 

①ガルテン

 

年間約4億円、12万人の交流が生むまちの経済効果

「秋津野ガルテン」は、ミカンやウメの産地で有名な和歌山県田辺市上秋津地区にある旧小学校校舎を活用した都市農村交流施設です。農家レストラン、宿泊施設を備え、近隣の地元農産物の直売所「きてら」と併せて、年間約4億円、約3200人のまちに交流人口12万人を誇るまでになりました。その取組みの中心のひとりが、農業法人秋津野ガルテン代表取締役社長玉井常貴さんです。

 

玉井さんはもともと地域の公民館で地域づくり活動をしていました。その経歴に白羽の矢が立ち、いまではコミュニティビジネス全体を舵取りする役に。しかし、その過程は苦労の連続だったそうです。

 

②玉井さん

 

地域づくりの視点が活かされた息の長い取組み

和歌山といえば、全国に誇るミカンとウメの産地です。特に上秋津は、柑橘類の種類が日本一、農とともに生きてきた地域でした。しかし、2000年代に入ると価格も消費も下落傾向。まちは、宅地開発とともに新住民との混住化が進み、改めて10年、20年先を見据えた地域づくりをどうするか、課題が生まれていました。

 

もともと地域づくりが盛んで、平成8年(1996)には『ゆたかな地域づくり表彰天皇杯』(農林水産省)を受賞、さらに地域づくりへの参加機運は高まっていました。31名の地元有志が出資し、わずか10坪のプレハブ小屋から地元農産物の直売所「きてら」がスタートしたのはちょうどその頃(1999)。「みかんの里でみかんが売れるものか」と揶揄されながら、通販によるリピート客を獲得、直売所は徐々に成功軌道に乗り始めます。しかし当時、玉井さんは「地域づくりはこれだけでいいのか、もっと地域のことを知らなくては」と考えていたそうです。

 

③きてら

 

そこで、生まれたのが『上秋津マスタープラン』(平成14年/2002年)です。約2年の歳月をかけて全世帯にアンケートを実施、地元、行政、大学が協働で作成した、まさに手作りの地域づくりの指針でした。この過程で地域の理念やビジョンを共有できたことが、後の旧小学校校舎を活用した「秋津野ガルテン」事業の成功へとつながったといいます。

 

③太陽光

 

太陽光発電の売電益で次の世代へバトンタッチ

コミュニティビジネスをゼロから立ち上げ、いまでは地域づくりのシンボルにまでなった「秋津野ガルテン」。ただし、その成功には、地域の様々な人の応援や協力があったそうです。地域への想いを出資の形で募るのもそのひとつ。そして、地域づくりのトップランナーとして走り続けてきた玉井さんも70歳を超えて、次の世代へ主役を引き継ぎたいと考えています。そこで、FIT(再エネ固定価格買取制度)を活用した太陽光発電事業に挑戦。地域づくりシンクタンクを設立し、発電で得られた売電益は、未来を創る地域活動や人材育成に充てることが可能になりました。

 

「地域づくりは、人、組織、産業、そして固有の歴史と文化をどう物語で描くか」。その言葉には、地域にある資源を磨きながら、じっくりと腰を据えて取組むことの大切さを教えてくれます。そしてなによりも、コミュニティビジネスの枠を超えて、地域の誇りや愛着につながっていることが、地域の持続可能性の源泉であることに気付かされました。次回は、旅行者としてゆっくりと訪れてみたい場所のひとつになりました。

 

 

「秋津野ガルテン」の地域づくりも事例教材として登場する再エネを活用した地域づくりを考える「まちエネ大学」は、今年度全国8か所で開校します。受講生募集中です。
まちエネ大学公式ホームページ

 

 

(宮城崇志)