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SDGsとビジネス、その最新事情とは!?

SDGs元年の今年、年始以降、国内ではSDGsに関するセミナーやシンポジウム、企業や自治体による情報発信が目白押しだ。元NHKクローズアップ現代キャスターの国谷裕子氏を迎えた朝日新聞社による『SDGsで変える』キャンペーンもスタートし、SDGsは、市民セクターにおいても理解・浸透の一層広がりが期待される段階になってきた。

 

2015年9月の国連合意から、約1年半。さて、国内企業においてはどの程度の認知や取組が広がっているのだろうか。その動態を知るための最新レポートであるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)、地球環境戦略研究機関(IGES)による共同調査レポート『動き出したSDGsとビジネス~日本企業の取組み現場から~』(H29年4月)からその動態を読み解いてみたい。(レポート本体は本ページ下部からリンク)。

 

※調査概要

GCNJ会員223企業/団体へのアンケート調査及び企業・外部関係者へのヒアリング(計17社・団体)(回答のほとんどが首都圏に本社を置く大企業であることに注意)平成29年4月11日Release

 

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ようやくスタート、しかし認知にはいまだギャップも

 

レポートでは、調査対象の企業の多くがSDGsへの認識を深め、何らかの取組を開始していると報告している。だが、企業における認知度では、

 

  • 認知度:CSR担当者間で2015年(61%)→2016年(84%)に増加
  • 経営層への認知度は28%に留まる。中間管理職の認知度が4%~5%に低迷

 

の結果となり、現場社員レベルと社会貢献関連部署・経営層では、認知にまだ大きな開きがあることが明らかとなった(レポートP10)。

 

また、SDGsに取組む場合の課題としては

 

  • 「社内の理解度が低い」(66%)、「社内の展開方法が未確定」(66%)、「社会的に認知度が高まっていない」(63%)、「定量的な指標など評価方法がわからない」(52%) ※複数回答

 

の結果となり、企業内部に関わる問題に加えて、社会の側の認知や評価に関わる問題が上位に挙げられていることが特徴的だ(レポートP19)。

 

これは、SDGs自体が社会課題を自律的に企業の取組として内部化していくという問題の性質上、社会の側が取組や成果なりを何らかの形で認識なり、評価などの形でフィードバックしていかなければ、企業としてもアクセルを吹かしにくい、そんな事情が垣間見える。

 

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「もう、やってるもん」の壁をどう乗り越えるか

 

さらにレポートでは、現状、先進企業の取組の多くは、SDGsを既存の企業理念や事業との整合性を判断するためのチェックリスト、いわゆる「棚卸し」の段階であると述べている(レポートP22)。中期経営計画そのものをSDGsを指標として戦略全般を見直し、本業による社会課題の解決を目指すオムロン株式会社のような先進的な企業も出始めているが、まずは、足元の事業や社会貢献等の取組を検証し、整理していくことで、企業が取組むべき課題は何か(マテリアリティ)を見定めていこうとする動きにも見える。

 

国も昨年12月、SDGs推進本部にて「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を決定、ビジョン、そして5つの原則を掲げ、2019年を目途に取組を推進するとしている。しかし、政府の資料を見ると、8つの優先課題とSDGs17目標を連関させているが、それぞれの中身は、過度の公共工事に支えられた国土強靭化政策など、足元の政策をSDGsという指標を通じて置き換えただけであり、本来17目標の課題連鎖において、相互的かつ統合的に解決すべきものが従来のタテワリの中で一律的に整理されてしまっている。

 

こうなると、SDGsの実行理念でもある「アウトサイドイン」、つまりサステナビリティという尺度での社会課題の重みづけを行い、有限性を認識しながら最適なリソース配分の下に、課題解決に取組むものとは、逆の動き(フォアキャスト)に留まってしまっているように見える。

 

これは、企業の取組においても同じことがいえそうだ。すでに、企業は多くの手間やリソースを割いて、環境課題や社会課題に関する取組を実践してきた。恐らくSDGsに関心の高い企業ほど、内部から聞こえてくるのは、すでに当社は十分に取組んでいるのでは、という疑問の声だろう。無論、SDGsは、こうした既存の取組を否定したりするものでは一切ない。しかし、ローカルな基準や義務を満たすというレベルではなく、企業には、その社会的影響力を行使して、先んじてグローバルイシューを取り込み、本業の高いレベルにおいて社会課題の同時解決への挑戦を望みたい。

では、この「もう、やってるもん」の壁を「もっと、やってるもん」に変えていくにはどうしたらよいだろうか。

 

 

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持ち合う、褒め合う、つなげ合う

SDGsはその範囲と対象を先進国、そして企業にも射程に置く画期的な国際合意である。グローバルな経資本主義社会において、国・地域を超える企業の役割はより一層重要であることは論を俟たない。では、企業によるSDGsの取組を進めるには、どういった仕掛けや仕組みが必要だろうか。3つのキーワードから考えてみた。

 

持ち合う:17の目標には、169のターゲットが設定されている。ただし、それらは到底、一企業で解決できるものではないし、一企業においても、一部署や一技術で対処できるものではない。そのためには、社会が持つあらゆる知恵と技術を持ち合い、また企業単体においても社内に眠っているリソースを持ち合い、社会課題の解決と本業の同時達成が可能な新たな共創価値を創りだしていくことが不可欠だ。こうしたイノベーションを興すリソースマッチングなどの場や仕掛けが社会、そして企業内においても一層重要となろう。

 

褒め合う:いかに、企業の取組みを誘発するインセンティブを仕掛けられるか。この点で、グリーン投資やESG(環境・社会・ガバナンス)投資の主流化は、市場が先行する形で中長期視点での企業の取組みの価値を評価するものとして、SDGsも同様のIndexの開発と運用などが望まれよう。また、コミュニケーションのレベルにおいても、企業に対する表彰制度や各種SDGs Awardの実施など、顧客や消費者も巻き込みながら、目に見える形で企業の取組みの価値を社会全体で褒め合い、先進事例を共有していく仕掛けが、企業の取組みを後押ししていくはずだ。

 

つなげ合う:目標17には、SDGs全てに関わるものとしてパートナーシップが掲げられている。課題解決アクションのフェーズでは、参画と協働が不可欠であり、社会課題の解決には企業が従来にはない多様なセクター、組織・団体の知恵と経験を取り込んでいくことが望まれる。また、企業が取組みの主体とならずとも、課題の最前線で活動している組織・団体を人的、資金的に支援するという形での参画と協働の形もありうる。ICTを活用した志のあるひと、お金、モノ、知恵をつなげ合う場やプラットフォームの機能を果たすような仕組みも、本格的な社会実装が待たれる。

 

持ち合う、褒め合う、つなげ合うは、実は、どの活動においても媒介となる人やメディア、仕掛けが必要である。関与者をいかに拡大していけるか。SDGsTVも映像を媒介として、さらにひと、お金、モノ、知恵をつなげ合うICTによるコミュニケーション・プラットフォームとして更なるバージョンアップ図っていく予定である。

(宮城崇志)

 

◆レポートのダウンロード(外部サイト)

http://www.ungcjn.org/activities/topics/detail.php?id=208

https://pub.iges.or.jp/pub/SDGs_Business_in_Practice