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地域の宝をみつける授業 –鎌倉・ナショナルトラストの歴史から思うこと-

映像教材をきっかけに、地域に潜む”大切なもの”に気づく

澄んだ空気の、ひんやり冷たい季節がやってきました。TREEのオフィスがあり、私の暮らす町でもある鎌倉も、行楽シーズンの真っ只中。週末ともなると、多くの観光客で大変な賑わいです。

 

さて、TREEが手がけている事業のひとつに、「地域の人たちによって大切に守られてきた、自然とともにある暮らし」について考える、ESD(持続可能な開発のための教育)があります。

 

TREEの得意とする映像教材を使って、地域にねむる、普段は気づかれていないかもしれないことに出会っていくというこの事業。三井住友信託銀行のCSR事業として、2012年、和歌山県田辺市の天神崎からスタートし、これまでに神奈川県三浦市小網代の森、岡山県美作水源の森、神奈川県鎌倉市鶴岡八幡宮、大阪府八尾市のニッポンバラタナゴ、福井県敦賀市の中池見湿地、木曽川のイタセンパラと、全国7地域の学校で授業を展開してきました。

近年、世界では自然の持つ価値への認識を深めようという観点から「自然資本」という考え方が広がっていますが、このような自然資本を守る活動のひとつとして、三井住友信託銀行は、ナショナル・トラスト活動を支援しているのです。

 

日本のナショナル・トラスト活動は鎌倉から生まれた

教材をつくる過程で、地域のさまざまなことに気づけるのも、この事業の醍醐味です。例えば、ここ鎌倉が、日本のナショナル・トラスト活動の発祥の地だったということも、そのひとつ。ナショナル・トラストは、産業革命の時代にイギリスで発案された、市民がお金を集めるなどして土地を買い取り、開発から守るという活動です。

 

実はこの活動が日本で最初に起こったといわれているのが、ここ、鎌倉なのでした。その舞台となったのが、この記事の冒頭に写真を掲載した、御谷(おやつ)の森。地図でいうと、こちらにあたります。

 

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(映像教材1「鎌倉と風致保存会」より。鎌倉の裏山、御谷の森を紹介)
鶴岡八幡宮の真裏の土地が開発されたらどうなるのだろう。そのイメージを記したのが、こちらの画像。鎌倉市都市計画課の方が所有する画像をお借りしました。こんな風にリアルに見せつけられると、ドキリとしてしまいますね。

 

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(映像2「開発が進められた時代」より、宅地開発のイメージ写真。画像提供:鎌倉市都市計画課)

 

もしも、土地を守るために立ち上がるひとたちがいなかったら、鶴岡八幡宮を背景に写した記念写真がどんな風になっていたことでしょうか…想像してみるだけでも、開発のインパクトの大きなことだとわかります。

 

ナショナル・トラストの考えを日本に紹介したのは、作家・大佛次郎。そして、これをきっかけに全国各地で開発から景観を守ろうという動きが起こり、「古都保存法」という法律の制定にまで発展しました。「鎌倉を愛するひとたちの起こした活動は、京都や奈良など、たくさんの歴史的な場所が守られていることにもつながっている」。授業を通じてそのことを発見した時の子どもたちの誇らしげな顔は、とても印象的でした。

 

開発と自然。この先にあるものは?

ところで、御谷の森の宅地開発の計画が持ち上がったのは、1964年。東海道新幹線が開通し、東京オリンピックが開催された年のことです。この年は、鎌倉にとって、大規模宅地開発の代わりに、景観を守ろうと立ち上がった市民による、風致保存会の設立の年となりました。

 

来たる2020年。再び東京に、オリンピック・パラリンピックがやってきます。江ノ島がセーリング会場にきまり、それに向けて、訪れる多くの選手や来客、観光客をどう「おもてなし」するかといった話題に関心が高まっています。私たちはどんな未来に向けてどんな「発展(Development)」を選ぶのでしょう。もう一度立ち止まって考える時を迎えているように思います。

 

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(風致地域の森林で間伐作業をする風致保存会のみなさん)

 


(広大な”広町の森”も、地域の人たちの活動によって守られた、鎌倉の誇る土地)

 

参考:

グリーンエデュケーション

http://www.egreen.or.jp/learningreport/9.html

三井住友信託銀行ESD

http://www.smtb.jp/csr/esd/index.html

 

(今井麻希子)